介護施設の種類をわかりやすく解説!
はじめに
一般的に老人ホームと言われる高齢者の住まいには、さまざまな形態が存在しそれぞれに入居条件・費用・サービス内容などが異なります。
この記事では多種多様な介護施設を比較・分類し分かりやすくお伝えします。
介護施設とは
介護施設は「公的施設」と「民間施設」の2種類に大別されます。
公的施設とは国・地方公共団体・社会福祉法人など公益の団体が運営している施設で、民間施設は民間企業が運営する施設です。
公的施設 | |
種類 | 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護療養型医療施設(介護医療院) 軽費老人ホーム(A型・B型) ケアハウス(軽費老人ホームC型) |
特徴 | ・国が補助金を出すので費用が安い ・入居金がいらない施設がある ・施設により入居待ちが長い ・相部屋ではプライベートが確保できない |
公的施設の中でも、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設(2024年3月31までに介護医療院へ移行)は介護保険制度上で「介護保険3施設」と言われます。
民間施設 | |
種類 | 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム グループホーム サービス付き高齢者向け住宅 シニア向け分譲マンション |
特徴 | ・費用が高め ・サービスが充実している ・施設数が多いため入居しやすい ・心身の状態に合わせた選択肢も幅広い |
介護度や認知症による受け入れ可能施設
介護施設は介護度や認知症の有無により受け入れ可能な要件が異なります。
公的施設 | |||||||||||||
|
自
立
|
要 支 援 1 |
要 支 援 2 |
要 介 護 1 |
要 介 護 2
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要 介 護 3 |
要 介 護 4
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要 介 護 5 |
認知症 受け入れ |
||||
特別養護老人ホーム |
× | × | × | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
介護老人保健施設 |
× | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
介護療養型医療施設 |
× | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
軽費老人ホーム(A型・B型) |
○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | ||||
ケアハウス(軽費老人ホームC型) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
介護保険3施設は要介護であることが入居の条件です。中でも特別養護老人ホームは原則要介護3以上で、入居の必要性が高い要介護者から優先的に入居できます。
民間運営の施設はそれぞれの入居要件を設けて利用者を受け入れており、幅広い選択肢の中から選べます。
グループホームは要支援2以上で認知症のある方が入居可能です。
上記はあくまでも一般的な例で、とくに民間施設はそれぞれ具体的な要件が異なるため確認が必要です。
それぞれの介護施設の相場費用
実際に介護施設に入居すると、どれくらいの費用がかかってくるのでしょうか。
公的施設
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設の介護保険3施設は入居金が発生しませんが、軽費老人ホームA型・B型・C型の3施設は数十万〜数百万の入居金が発生します。
月額利用料の相場はいずれも5万〜15万円程度です。
また、介護保険3施設は所得が低い人の負担を軽減する「特定入所者介護サービス費」の制度が受けられます。
民間施設
民間施設は入居一時金が発生する施設が多く、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームにいたっては、数千万の入居金が設定されている高額ホームも多くみられます。
グループホームの入居金は0~数十万・数百万と施設によって大きく異なります。
また、サービス付き高齢者向け住宅は初期費用が低くおさえられるのが特徴で、敷金として支払う費用が15〜30万程度です。
シニア向け分譲マンションはマンションを購入する形なので、数千万〜数億円と購入費用が高くなりますが、マンションは自らの資産になります。
民間施設の月額利用料も施設によって幅がありますが、おおむね10万〜50万程度です。
これは施設によって設定が幅広いため大まかな相場ですが、いずれにしても費用面は大切ですのでしっかりと確認しておきましょう。
それぞれの施設の種類におすすめな人
それぞれの施設がどのような人のニーズに合っているかそれぞれご紹介します。
公的施設
特別養護老人ホーム:終日介護が必要な人
略して「特養」と呼ばれる特別養護老人ホームは、原則要介護3以上で終日介護の必要な方が入居できる施設です。毎月地域ごとに開催される入居判定会議で決定された、入居の必要性が高い要介護者から優先的に入居ができます。
費用が安いため、地域によっては待機者が多くなかなか入居できない施設です。
医療ケアより介護が主なので、医療サポートが必要にならない限り終身利用が可能です。
介護老人保健施設:退院後に在宅での生活が不安な人
介護老人保健施設は、退院後の在宅復帰までに必要な医療ケアやリハビリが受けられる施設で「老健」とも言われます。入所期間は原則3ヶ月で終身利用はできません。
看護職員の割合やリハビリを行う設備と人員体制が充実しており、医師の常勤配置も義務付けられているので健康管理には安心の施設です。
退院が決まったけれど、まだ在宅での生活が不安な方におすすめの施設です。
介護療養型医療施設:病状は安定しているが医療的ケアが必要な人
介護療養型医療施設は2024年3月31日までに介護医療院に移行されます。
医師・看護師による医療サポートや理学療法士によるリハビリが充実していますが、生活援助のサービスやレクリエーションなどが少ない傾向にあります。病状は安定しているが、点滴・胃瘻・痰の吸引などの医療的ケアが必要な人に向いている施設です。
軽費老人ホーム(A型・B型):サポートを受けながら自立した生活を送りたい人
軽費老人ホームにはA型とB型があり、低所得で家族の支援が受けられない人が対象の施設です。
軽費老人ホーム (A型) | 見守りと食事の提供を行う |
軽費老人ホーム (B型) | 見守りのみを行うので自炊が必要 |
自立した人が対象の施設なので、介護が必要になった場合は在宅サービスを利用します。常時の介護が必要になった場合は介護型の施設に移らなければいけない場合もあります。
利用料金が安く、他の施設に比べて自由度が高いのが特徴。まだお元気だけれど、一人での生活が不安になってきた人にはおすすめです。
ケアハウス(軽費老人ホームC型):低所得で家族の支援が受けられない人
「ケアハウス」という呼び方になじみがある、軽費老人ホームのC型は「一般型」と「介護型」があります。軽費老人ホームA型・B型と同様、低所得で家族の支援が受けられない人が対象です。
一般型 | 自立度の高い方が対象。介護が必要になったら在宅サービスを利用する |
介護型 | 24時間の介護サービスが提供される |
一般型は自立している方が対象なので、介護が必要になったら在宅サービスと同じようにケアマネージャーを通して訪問介護などの外部サービスを利用しなければいけません。
一方介護型は、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているので、施設のスタッフから介護サービスが提供されます。
民間施設
介護付き有料老人ホーム:サービス内容にこだわる人
介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設で、介護度に応じた施設サービスが受けられます。入居金が高額な施設が多く、価格設定・入居条件もさまざまです。
食事・レクリエーションなどのサービスも充実し、幅広いニーズに対応しているのが特徴です。
住宅型有料老人ホーム:必要な介護サービスを自由に選択したい人
施設に入居しながら、必要な介護は外部サービスを利用するのが住宅型有料老人ホームです。 ケアマネージャーに介護サービスの調整を依頼し、外部のデイサービスに行くことも可能です。設備やサービス内容は介護付き有料老人ホームと同等で充実しています。
グループホーム:認知症になっても自分らしく暮らしたい人
グループホームは認知症ケアに特化し、5人〜9人のユニットで役割分担しながら共同生活が送れる施設です。要支援2以上で施設の所在地に住民票のある方が、住み慣れた地域で生活し続けられます。認知症を持った方が、自立支援のサポートを受けながら生活できる点が魅力です。
サービス付き高齢者向け住宅:一般住宅と変わらない自由な生活を望む人
サ高住と略されるサービス付き高齢者向け住宅はバリアフリー構造の賃貸住宅です。
介護が必要になれば外部サービスが受けられますが、比較的介護度の低い方に適している施設です。安否確認や生活相談を受けながら安心して生活ができ、一般住宅で暮らしているような自由な生活が送れます。
介護付き有料老人ホームより費用がかからないため人気がありますが、サービス内容やサポート体制、設備は施設によって異なるので確認が必要です。
シニア向け分譲マンション:マンションを資産として所有したい人
シニア向け分譲マンションはその名前の通り、高齢者が住みやすい設計の分譲マンションです。 マンションの購入費用がかかる富裕層向けのサービスで、設備が充実している物件が多いのが特徴です。
施設を決める際に重要なポイント
これまでご紹介したように、高齢者が入居できる施設は多種多様です。ここで、施設を決める際にとくに重要なポイントをあげます。
入居条件 | 年齢 要介護度 健康状態 認知症の有無 |
環境 | 施設の立地条件(住み慣れた場所、家族が訪れやすい場所・周辺環境) 共有スペースの設備 居室スペース(持ち込み可能な私物) 他の利用者の雰囲気 |
費用 | 入居金が必要か 月額利用料(介護保険の自己負担額・医療費・日用品・おむつ代・食事代・有料サービス) |
スタッフ | スタッフの人員体制 スタッフの雰囲気 |
介護保険サービス | 介護保険サービスが受けられるか 介護度が重度になった時の対応 |
その他のサービス | 医療体制(看護師・提携医療機関) 機能訓練の体制 緊急時対応 生活支援サービスの内容 食事内容 イベント・レクリエーション |
まとめ
今回の記事では、介護施設とはどのような施設があり、どんな特徴を持っているのかを解説しました。
高齢者の住まい選びは、心身の状態・生活スタイル・予算など考慮すべき点がたくさんあります。
各施設の特徴を知って理想の住まいを選択してください。